真夏のイヴ(第2稿)
セイミー

真夏のイヴよ
ぼくがぼくであるうちに
君は君に出会えるだろうか
ぼくがぼくのほおやくちびるに出会うように
君は君に出会えるだろうか
ぼくはぼくの思いの中にすべてを形づくっているのに
君は君の本当を気づいていない

真夏のイヴよ
ぼくがぼくであるうちに
君は君には出会えない きっと
ぼくがぼくから出ていくとき
君ははじめて君に出会う

思い切り飾らない言葉で言ってやろうか
ぼくはたった今君に出会うから
君もぼくに出会う
そのときはじめて君は君自身に出会える
たぶんそう

君がそうして座っている間にぼくは
ぼくの外へ出て君の横へ座るんだ
そこはたぶん黒い岩の上だと思う
おしりにこころの痛みを感じて二人並んで
腰を下ろすんだ
ぼくが「冷たいね」っていったら君は
「そうね。」なんて言っちゃいけない
「そんなことないわ。」って言うんだ
「悲しいよ。」って言ったら
「何寝ぼけてんのよ。」って言うんだ
「あっちへ行けよ。」って言ったら
「ここがいい。」って言ってほしいから
「臭いせりふだろ。」って言ったら
「そんなことないわ、素敵なせりふよ。」って言ってほしいから
だからぼくは夜を裏切らない
月の響きを含んで膝をかかえる君も裏切らない
いちまんの星たちが
意味もなく光っているなんて信じられるかい
天文学者や物理学者はそこに小さな粒子のぶつかり合いを見つけ
わくわくしているだろう
あの星空はぼくらの中にもある
だから星空はとっても懐かしい
いちまんの虫たちが
意味もなく鳴いているなんて信じられるかい
生物学者や考古学者はその細胞の細い細い絡み合いを見つけ
きゃぽきゃぽしているだろう
あの虫の声はぼくらの中にもある
だから虫の声はとっても懐かしい
ぼくの中に君がいて
君の中にぼくがいると
なんだかとっても懐かしい
それは二人が出会ったから

ぼくがぼくであるうちに
君は「ぼく」に出会えるだろうか
君が君であるうちに
ぼくは「君」に出会えるだろうか
いちまんのひかりとじかんとくうかんが
懐かしい言葉を貫くように


自由詩 真夏のイヴ(第2稿) Copyright セイミー 2006-05-14 20:44:40
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