五月の彙報
本木はじめ


五月の彙報




月光のはしゃぐ五月の階段の途中できみとすれ違うだけ


降り注ぐ色とりどりの花々がきみを優しく包み込む通夜


未熟だと知ればけもののねむりから飛び立つひかりの行き先を追え


罪深きあだむとイヴという言葉とってもとっても清少納言


人形をおんぶしている幼女からもらった飴が意外と苦い


あー、ぼくはミルクと抹茶だけでいいすべての嘘が去ったその午後


ガソリンにライター投げてそれからは覚悟を決めてほほえむだけよ


空撮をしているヘリコプターを見て墜ちればいいと思う空ごと


汚れた手みつめて春はどんよりと過ぎゆく海のさざ波の跡






遠点放射




OPENと書かれた扉ひらいてもすべてのゆめは醒めないでしょう


この街にいつか終わりが来ることを思う少年だろうか彼は


老いてなほきみは美しかろう春ひづんだ廊下の奥の花束


きみを融解するよ今晩は道がどこまでもつづくね


頭が大根になるよきみの美しさに忙しさがほろびる


%的だね、雲が海みたいにきらめいてあしたから少し笑うことにするよ






ゆび使い座




、包帯を巻いてあなたは「雷に鳴りたかった」と言い続けてる


拠りかかる金魚紫陽花薔薇孔雀虹の光彩つぶての闇に


春の雪降るとふ都まぼろしのきみの小指に彫られし蝶と


きみは中国に帰るんだね。海は青いけどぼくらの血は赤い


忘れるよおまえのことはもう二度と思い出さないおもいだすまで


サンキュー、フレンズ!バイバイは言わないよ秘密基地が燃える


春のその無言のきみを責め立てる雷雨のごとき花々の赤


新しいきみの名前をみつけたよ底の底の底の、青空






偽物小屋




やわらかく魚眼レンヅはきみの眼を映して割れる無数の視線


ネオロマンチストだきみは校庭にすでに死体のぼくを呼び出す


鉄格子はさんでとわに信じ続けている自由なのは僕だと


ひからびた猫の死体に語りかける立体駐車場で天使は


もし仮に翼があったとしても嗚呼、ぼくは飛べただろうか屋上







短歌 五月の彙報 Copyright 本木はじめ 2006-05-13 13:53:31
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