氷睡蓮
とうどうせいら

君のおもかげを
他の人に探してしまうのを
やめようと思って。

やめよう、やめようと思いながら
そう意識すると
なおさらまとわりついて。

疲れてしまった
人と会うのは。

今日 少し吐いた。
背中を丸めて
洗面台の前でへたりこんでいたら

私の背中を優しく誰かの手がなでてくれる。

私に触らないで。
期待してしまうから。
そう言おうとして咳込む。

背中の手は温かい。
君を忘れることがあっても
君の体温を忘れる訳がない。

自分が言ったんだ
あなたの温もりを私にもわけて、って。
ひととき君に求められたのはわたしの誇り。

君が投げかけた光
私の一生を照らす
君が投げかけた甘苦しい秘密

このまま振り返らず
もう少しだけ
なでてもらったら。


夢から醒めましょう。




自由詩 氷睡蓮 Copyright とうどうせいら 2006-05-12 20:39:02
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