風触
たりぽん(大理 奔)

見えない風で
街を満たしていく
それは流される疑似餌
のようなものではなく
濁流の中で耐える小石にも似て
揺らいで見えるのは
まぶたの裏の潤みの中で
抗う魚の影か

   立体駐車場は非エンタシスの柱
   揺れる非常出口表示の
   カチカチとたたく音
   うなるのは
   低音だけのハーモニカ

老いた樹の
日の当たらない貌
錆を背中に流す雨を連れて
飛砂で刻む
立ちつくした
、という記憶

飾るスミレの群れ
墓標はついに
切り立つ岬におかれ

高音だけのオーボエで
いつしか呼び覚ます
抗う波に似た

それが
あなたへの



自由詩 風触 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-10 23:26:03
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