「 淡々と 」
椎名

引き潮が引くように
満ち潮が満ちるように

繰り返される
繰り返される

喜びも
哀しみも

日が昇る
夜が明ける
輝きだす家々、草木
眠い目をこすりながら
時計を見て飛び出す人々
電車に揺られ
バスに詰め込まれ
日常の中へと漕ぎ出してゆく

何気ない日々
仕事に追われ
仲間と過ごし
何事もなく
一日が終わる

日が沈む
暗くなる
全てが夜へと
歩き出す
草花は眠りにつき
家々は闇に飲まれぬよう
明かりをともす
星が瞬くころには
夢の世界

引き潮が引くように
満ち潮が満ちるように

繰り返される
繰り返される

喜びも
哀しみも

生きてきた証を残そうと
人々はこころを痛める
しかしリズムは変わらない
全てを飲み込み
時がさらさらと流れてゆく

何も知らないほうが幸せ
何も考えないほうが幸せ

夜が明けて
昼を過ごし
また夜が来て
変わりのない夢を見る

何も望まないほうが幸せ
何も求めないほうが幸せ

引き潮が引くように
満ち潮が満ちるように

淡々と
ただ
淡々と
生きていけるなら


自由詩 「 淡々と 」 Copyright 椎名 2004-02-13 00:01:52
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