「終わり」がわからなかった
クリ
母の胸にいると、いつもミルクがあり
心臓のトックトックが子守唄で
ミルクもトックトックも途切れることはない
だから大きくなってお菓子を食べて
もっと食べたいのに袋は空で
何故なのかわからなくて泣いた
札幌に住んでいたときは道は碁盤の目で
子供の目で見るかぎり道は東西南北に果てしなく続く
だからふと疑問に思うときが来る
「道路は海に出会うと、どうするのだろう?」
つまり、道は人が作ったものであり
それには行き止まりがあること
そのことを子供はなかなか理解できなかった
社会に出ると子供は残酷に成長させられる
ミルクもお菓子も稼がなければならず
夕飯の牛丼にありつけない日もある
優しい鼓動を聞くことはそう滅多にはなく
膝枕が入れ替わり立ち替わり現れるものの
その膝でミゾオチに蹴りを入れられたりもする
道は大抵四次元構造で、必ず行き止まる
そうしていつの間にか知らされる
心臓は止まり、ミルクは尽きること
恋人は去っていくものであること、道は終わること
「大人になる」ということは全然大したことではない
ただ知っていくこと、それだけ
「終わりがある」ということを知ることがほとんどだ
そして、自分にも終わりが来ること、それも知る
終わった後のことをそれほど怖れはしないけれど
終わることそれ自体がイヤなものはたくさんある
長い長い小説をもし書いたとしたら、きっと
最後の一行は「つづく」とするだろうな
詩人たちはあることを知っている
決して終わることのない詩があることを
いつかそれを自分が書き始められる
それを信じて詩人たちは、書く
しかし今はまだ、この詩も終わらなければならない
それがちょっと寂しいけれど…
Kuri, Kipple : 2001.03.06