タンポポ
松本 卓也
米軍基地を見渡せる
緩やかな坂の中ほど
ぽつんと小さく咲いている
タンポポに目を奪われた
種を飛ばす少し前の
綿毛を湛えたその姿が
遠くのドックに停まっている
巡洋艦と重なっていた
そんな不釣合いな映像が
何故か酷く自然に見えて
ほんの少し立ち止まり
記憶に刻み付けてみて
いつか種子が風に飛び
遠くで息吹くのだろう
どんな不釣合いの場所でも
風景の一部と化してみせて
同じ場所でも違う場所でも
タンポポであり続けるのだろう
何者かなど考えもせず
生きる意味など思いもよらず
来年またこの場所に
きっと訪れるだろうから
また同じ景色を見せてくれ
あり続ける姿を忘れない為に