タンポポ
松本 卓也

米軍基地を見渡せる
緩やかな坂の中ほど
ぽつんと小さく咲いている
タンポポに目を奪われた

種を飛ばす少し前の
綿毛を湛えたその姿が
遠くのドックに停まっている
巡洋艦と重なっていた

そんな不釣合いな映像が
何故か酷く自然に見えて
ほんの少し立ち止まり
記憶に刻み付けてみて

いつか種子が風に飛び
遠くで息吹くのだろう
どんな不釣合いの場所でも
風景の一部と化してみせて

同じ場所でも違う場所でも
タンポポであり続けるのだろう
何者かなど考えもせず
生きる意味など思いもよらず

来年またこの場所に
きっと訪れるだろうから
また同じ景色を見せてくれ
あり続ける姿を忘れない為に


自由詩 タンポポ Copyright 松本 卓也 2006-05-01 00:47:05
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