欺瞞の坪庭
あおば

ぎゃっと
言って
飛び跳ねたのは
蛙のような男
ひっくり返ったのは
瀬戸物の青がえる

緑の館にすむ者たちがイカレタあとで
笛吹童子が廃品回収にいそしむ毎日

退屈だなぁと
鳥山明の描いた靴が
くっくっくと腹を開いて
焼き魚定食を誂えて
そこら中の焼き缶を潰す

やきかんやきかん
果物屋に忍び込んでつぶれた
顔のない男が
焼き缶どんぶりに躓いて
空見たことかと
べそをかく
顔のない蛙
唆されて
富士山に登ってみたが
観光客ばかりで
絵はがきを買って
一人寂しく下山した
帰途、冷たい雨に降られて
滑りやすい石ころ道を
達観した者も
そうでない者も
転ばないように
足を踏ん張る
見たもの乞食の面構えは
フルートを吹く芸人のように
純朴なので
拍子抜けした水鉄砲で
箱庭の蛙の顔に水を掛け
今日も良い天気
洗濯物がよく乾くわねと
大正生まれの伯母さんが
ころころと笑う声を
坪庭に閉じこめてから
粘土細工の玩具の
ブルドーザーのキャタピラに
中性の水を吹き付ける

おどけた蛙
顔のない蛙
巫山戯て開いた
その口に
シャワーのように
贅沢に
春の光が
空が
降り注ぎ
何処かで雲雀が鳴くような
青白い雪柳が
顔をのぞかせ
すぐ引っ込んだ


未詩・独白 欺瞞の坪庭 Copyright あおば 2006-04-28 01:54:32
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