incomplete poet
塔野夏子

必死に壊れつづけている

飛び散る銀色のビス
耳には音楽のようにつづく歯車の諧音
プリミティヴな装置に
青い微笑み
必死に壊れつづけている

遠くから重く暗い地響きのようなうなり
はがれ千切れてゆく空
不釣合に高度な暗号が
いたずらにやわらかい心臓に組み込まれ
飛び散る銀色のビス
歩いてゆくごとに
燃え落ちてゆく夢のフォルム
必死に壊れつづけている

耳には幻のように透きとおる歯車の諧音
頭上には見えない岩石
ナイーヴな回路に
青い既視感
使い回されたエネルギー源は
どろりと爛れ垂れ流されて
飛び散る銀色のビス
必死に壊れつづけている

あともう三歩 二歩 一歩





私家版詩集「ラボラトリ」掲載
「TILL特別編集NC/NC」(新風舎、2001年発行)に「不完全な詩人」のタイトルで掲載






自由詩 incomplete poet Copyright 塔野夏子 2006-04-27 22:23:54
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