菊の花
日和
花が好きだったばあちゃんに
花を摘んで帰ると
十日に九日は叱られる
「野に咲いとうのが
美
(
うつくー
)
しかと」
だから摘んで来なさんなと
ばあちゃんの手のひらはまめだらけ
ばあちゃんは花たちを娘のように可愛がって
いつも
話をしながら水をやる
あんまり娘が多いものだから
話が長いものだから
いつの間にか
如雨露
(
じょうろ
)
でまめだらけの手
それでなくても皺だらけの手
花がすきだったばあちゃん
花がすきだったばあちゃん
いつしか
ばあちゃんの周りには菊の花が敷き詰められた
ねえばあちゃん
菊は好きだったっけ
ばあちゃんの庭に
菊はなかったはずだけど
ねえばあちゃん
菊は私 あまり好きじゃないよ
ばあちゃんのまめだらけの手は
みぞおちで固くにぎられて
まめなんか見えなかった
ただの皺だらけの手になっていた
もう怒る人はいないのに
いなくなってしまったのに
いまだに花が摘めない
『野に咲いとうのが
美
(
うつくー
)
しかと』
皺々の顔をさらに皺くちゃにして笑った
ばあちゃんの眩しいほどの眼差しが思い出されて
来年は
菊の花を植えようか
ばあちゃんの
庭に
自由詩
菊の花
Copyright
日和
2006-04-21 19:38:22
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