天地
山本 聖

オオカミの皮を被ったトイプードル犬と
ライオンのたてがみを纏ったペルシャ猫がやってきて
逆立ちをしながら訝しげに問う
お前は何故に逆さまでないのか?
お前は何故に柔肌を滑らせているのか?

私は逆さまにならんと空を蹴立てあげ
自らの基盤を蹂躙し
霜の降りた芝の上に爪をたてて笑ってみる

南半球のとある川にて
真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐであった大鰐が
これまた真っ直ぐなる大蛇に食われたとさ
そして蛇の腹の中で逆立ちをしたら
腹がポンと割れて共に水の底に沈んだとさ
沈んで沈んで、沈みすぎて
北の霜降る私の庭からひょっこり顔を出し
「ああ、やっと逆さまになった」と嘯いたとさ

私は
ひとの皮を被ろうか
そうしたら
少しは楽に贋者らしくなろう
少しは楽に逆さまになろう


自由詩 天地 Copyright 山本 聖 2006-04-21 18:25:37
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