*その、平穏*
かおる



スモッグか春霞のせいか
メラメラと焼き尽くす朝焼けはない
セロファンに透かしたような太陽
掴めそうな不吉

それでも朝の鼓動は姦しい
チュン チュン チュンと 
ことりは さえずり
カラスも 朝から 呼んでいる
車だって起きだして 
もう 右往左往と動き出し

萌葱色のそよ風に抱かれた山々は
はるが来たよとさくら色に発光し
はらはらとピンク色の泪を散らす
すると辺り一面緑色にふやけてく

あたしは大きく 伸びをして
 眠れなかった昨日を 追い出すの
  平穏な 朝を たっぷり 吸い込んで
   新しい 一日の はじまりに
    その日だけの とっておきの 
     おはようと言って

めぐる めぐる 日常
じっとりと纏わりつく重厚な闇と
ペラペラでうすっぺらのよるから
 今 光が生まれ そして

めぐる めぐる かぜ めぐり
  ふわっと甘い薫りもわたり 
    羽虫がブーンとうなり

びろうどの手触りを体いっぱいにうけ
    むっとする草いきれを
       おなかいっぱい 吸い込むの

あぁ 子供らの 笑い声が こだましていく

あおとみどりと そして あたし

めぐる めぐる 三位一体に めぐる
そらと大地とちっぽけな自分
ぐる ぐる ぐる ぐる るるるる
その、平穏な日常に澱んでくの



自由詩 *その、平穏* Copyright かおる 2006-04-20 17:09:35
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