愛するこころを忘れずに
恋月 ぴの

あなたに「俺を愛せ!」といわれても
愛することのできないわたしです
あなたの冷たい仕打ちのおかげで
路傍の露と消えた二百十万の御霊を思えば
どうしても愛することはできません


市谷で散ったあのひとのこころざしを
無駄にしたくはないけれど
愛したいのに愛せない
それはきっと あなたのせい


お慕いしていましたあのひとは
いさぎよさに散りました
桜の花が散るように
我が身を 我憂いを散らせました
そんなあのひとの凛々しさに
わたしは恋焦がれ
今でも忘れることはできません


あなたのうたを歌うのは
  あなたのためなんかじゃない


あなたの印を仰ぐのは
  あなたのためなんかじゃない


白地に赤く
溢るる思いは永久に八千代と申します
それならば 何をいまさら
どうして今頃
あなたから「俺を愛せ!」といわれても
とまどうばかりの わたしがいます


散るを厭う世にも人にも先駆けて
      散るこそ花と吹く小夜嵐

あのひとのおうたです
散るこそ花となったのですね
11月25日あのひとは鮮やかに散りました


愛するこころを忘れずに
わたしは生きて 今ここにいます


自由詩 愛するこころを忘れずに Copyright 恋月 ぴの 2006-04-20 06:39:45
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