呼吸と心臓
美味

いつも疲れて帰ってくるあなた
ご飯を食べて
お風呂に入って
ベッドに休まる頃には
ぐったりと死んだように眠るあなた
家に一日中居た私には
まだ眠りにつくのは早い
でもあなたを起こさぬよう
そっと、添い寝をする

苦しいのだろうか
あなたの表情が曇っている
大丈夫かと囁くように聞いても
あなたは顔をしかめて眠るだけ
そんなあなたを見ていると
段々、申し訳ない気持ちになってくる
あなたはこんなになるほど大変な思いを
してきたのだろうというのに
私は家という暖かい箱の中で
のうのうと時間を潰していただけだから
時計が時間を告げるコツコツという音が
私の心臓を一秒単位で締め付ける
居たたまれなくなって溜め息を吐こうにも
あなたを起こしてはいけないから
寸前で飲み込んだ

窓の外から差し込む月明かりが
あなたの顔を真っ白に照らすと
それは、死んでしまったのではないのかと
思うくらい真っ白で
綺麗で、すごく怖かった
微かに聞こえる頼りない寝息が
あなたの生を保っている
結局、私は何もしてあげられない
無いと死んでしまう呼吸にはなれないのだ
考えてしまうと、もう止まらなくて
どうしようもなくて、少し泣いた



ねぇ、あなた
無理しないでね
辛かったら言ってね
お願い





自由詩 呼吸と心臓 Copyright 美味 2006-04-18 20:04:35
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