その、平穏
たもつ



四つの脚をたて
温度の低い床に
椅子が停泊している
いつまでも出航しないのは
その方法を忘れてしまったから
ではなく
航行すべき海が
椅子の内に広がっているからだ
水が溢れ出さないように
今日も椅子は自らを
固く閉ざしている
それでも時々
波が白く砕けると
その背もたれを湿らせ
わたしの海へと
つながろうとする




自由詩 その、平穏 Copyright たもつ 2006-04-18 16:28:33
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