あたししあわせだったとつぶやきながら愛するひとの腕の中で
モリマサ公

「おれ死ぬね」ねで終わる死にはなんとなく潔さがかんじられずただのお休みメールだとおもい絵文字をかえすと
泣きながら電話がかかってきた


「死ぬな」といわれ目が覚める
全くそういう気分じゃなかったがそうみえたのかもしれない
そういうときにうっかりそうなってしまうことがあるのかもしれない
どちらもリアリティに欠けていて
自分が信用できなかった
それよりこの人ってだれなんだろう





わたし
「死ぬの?」ときくと
みんなが一瞬変な表情をうかべる
しっているひとたちなのに全然しらないひとのようにみえてこわかった






「わしは死なぬ」とおじいちゃんがいって
みんな笑った
瓶ビールはもうぬるかったけどだれも文句をいわなかった
そろそろここに帰ろうかなとおもうというと
ここに帰るってなんだかへんね
とスイカの種をふきだしながら
おねえちゃんが笑った







映画の中でもうだめそうな偉いひとがいった
「まだ死ねぬ」
なにかやることが残っていて
立ち上がるのをやめて目を閉じたりするようなフンイキじゃなかった
ぬで終わる
そういう感じの人と
もしすれちがうことがあっても声をかけるのはやめようとおもった








あーもうくたびれた
部屋の掃除とか全部したし
今日はおふとんも干したし
ごはんも食べたし
現実的にはそうもいかなかった
これ以上借金を増やすわけにはいかない
誰もいない今しかない
よし
「死のう」
いってみたもののとりあえず干したてのふとんで寝てみることに





「死んで」といわれて横を向く
やっぱ一緒には無理だなとおもう
今すぐにといわれてやっぱ無理だなとおもう
六畳が一瞬気まずいフンイキになる
よこから彼女の親友と名乗る男が「おまえ飲み過ぎだぞー」と肩を抱くと大声で泣き始めた





じゃあ「死ねば」
死ねばいいじゃん
といったら激怒した
あんなにさっきまで死にたがっていたけどそうじゃない
ひどいことをいうね
ひどいことをいうね
という
ひどいことをいってるのはどっちなのだろう
今はそんなことをいっても無駄なのかもしれない








はやく
「死ねよ」
われながらひどいセリフだとおもう
いいから
「死にな」
これでかかってくる女も大概だ
両親に家を買ってやるためにいうセリフじゃあないな
この女でこの仕事をやめよう
これが最後だ



「死ぬよ」
というのでみていたらおおきく二回反ってそのまま虫はうごかなくなった








父親が
「死ぬぞ」
といいながら台所で包丁を握ってたっている
ふりまわしたので
母が泣きながらそれを止めて腕を切った
ぞうきんで血の跡をふきながら
死ぬって何の事だろうと考える
だれが?
小学校4年生だった





 


自由詩 あたししあわせだったとつぶやきながら愛するひとの腕の中で Copyright モリマサ公 2006-04-18 14:52:46
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