梨の花
はなびーる
小津安二郎のアングルで
見渡すかぎりに手を繋ぎ合う
梨の畑を見ている
綺麗だね
白い 白い 白い 花
人に矯められたのだとしても
ガラス張りのカフェで見ている
晴れてもなく
曇ってもいない
白い空よりもなお
白い 白い 白い 花
作り込まれたものだとしても
人の身の丈に仕立てられ
固定された枝に
「痛み」や「軋み」を見るのは
勝手な思い入れだろうか
清廉な花たちは
厳しい労働の合い間に
手を休める人を癒すのか
どこからか声がする
「それはおまえに足りないものだ」と
見上げると
ツバメがすいと飛んでゆく
一枝の松を生けるために
矯めようとしたことがある
天・地・人…
注意深く枝に手を添え
少しずつ曲げるのだけど
痛いと云われているようで
手が震えて
うまくいかず折ってしまった
何かが足りないままに
ずるずると生きている
ひそやかな痛みや軋みを
自覚しながら突き進むことを
いつか選ぶしかないことに
「戦いているおまえは臆病者だ」
なにもない空と見ている
白い 白い 白い 花
清廉な花たち
明日 たわわに実を結ぶのだろう
乗り越えてゆく
揺るぎない想いにあふれて