雨、あばかれる黄砂に
たりぽん(大理 奔)

春に降る雨で
体のかたすみが
ざりざりです

   暗闇に体を置いて
   ぬくもりだけに委ねれば
   心の対流で
   とりもどす

ほんとうのすがたで
触れようと指を伸ばすと
爪先からの旅のはじまり

   正体を
   瓶に閉じこめると
   移ろいを傍観するだけの
   砂時計でくのぼう

僕は違う、僕は違う
この胸のまんなかで脈動とけい
傍観してはいないのです
激しく苦しく生きている
あえぎながら刻んでいるのです

   春に降る雨が旅人を
   連れてきて
   ざりざり

ほんとうをとりもどしただけで
どうしてこんなに渇くのでしょう
こんなにふるえるのでしょう

   春の雨のせいだ
   春の雨のせいだ

季節だけにではなく
別れを告げる
爪先からの
旅のはじまり


   僕は違う、僕は違う





自由詩 雨、あばかれる黄砂に Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-04-15 20:33:12
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