西行法師の如く the Buddhist said
AKINONA

願わくは花の下にて春死なん
そういったのは、誰だっけ?

私もあなたの言葉にならい
桜の花咲く木の下の
ベンチに長々と横たわって
桜の花を真下から
眺めてみることにしました
まだ白い夕方の月が
美しい花咲く枝の間から見え隠れし
赤く、そして藍色の夕方の光が
そんな花々を照らし、語りかけています
ああ、たしかに
このような美しい景色の中で
息絶えることができたなら
それはこの疲れた一生の全てを
あっという間に癒してくれるだろう
夕方六時の鐘がなり
思わず私は鞄の中に
入れっぱなしだったカメラをだして
腕を伸ばしてかまえます
けれど、流れる雲が遠ざかり
風が枝を揺らすのをやめても
花にピントはあうけれど
月にはピントがあいません
これは、カメラのせいでしょうか
それとも私の胸が、目が
涙でにじんでいるせいでしょうか
優しい音楽が耳にかけたイヤフォンから流れ
少し冷たいけれど優しい夕方の風が
横たわる私に声なき声で語りかけます
ああ、今日はこれまで
私は立ち上がって帰途につきます
にじんだ月と優しい花々を収めたカメラを
鞄の中に再びほうりこんで

願わくは花の下にて春死なん
そう言ったのは、誰だっけ?


自由詩 西行法師の如く the Buddhist said Copyright AKINONA 2006-04-13 21:36:14
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