六月の顔色
こしごえ

私が、いくら黒ずんだところで
霊を量れることはない
一度たりとも零さずに口遊くちずさむことなどありえない

月が、いくら青ざめたところで
距離に近づくことはない
離れるばかりで引かれていく未来へ

林檎が、いくらほほを赤らめたところで
神話が、結ばれることはなく
宙で廻り続ける。

仄暗い森の中を
淡い影が、
羊歯しだや苔の花の上を
やせ細った足取りで
しわがれながら通り過ぎてゆく。

石の肺のような
息をして
透けていく
なれの肌。

縁側から見た驟雨しゅうう
扉の閉まる音に
振り向かず。
白鷺しろさぎが田園の真中で
片足立って
たそがれている






自由詩 六月の顔色 Copyright こしごえ 2006-04-13 14:10:58
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