ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア
河野宏子

くたびれた頭を枕にあずけて
今日をほどいていく
僕の一日の終わりに
ながれはじめるイメージはいつも同じ
恋しいひとの部屋までの家路
急な坂の上、五階の角の窓、
高みに近づいて行く僕の足
坂道の引力
眠気が手伝って
また帰れないね
始まってしまった旅はまだ
ずっと長く続くから
きみの窓辺の青い花がまだ
うなだれないよう祈りながら眠るんだ

昨日の街で出会った老人は言った、
「花は早く枯れたがるものだ」
だとしたら僕はきみの窓辺の花ほども
時間の重さを知らないのかもしれない

たったひとつの地図が手がかりの旅
たったひとつの宝物を探す喜び、
僕は明日もこの平たい足で
世界のステージを跳ね回るんだ

どこにいても
僕を惹き付けている大きな力
故郷から遠く離れた町で
疲れ果てたからだが見る明るい夢みたい
暗闇できつく閉じた眼にくっきり浮かぶ

たったひとつの地図が手がかりの旅
たったひとつの宝物を探す喜び、
僕の磁石は決して狂うことがない
ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア

神様ありがとう
あなたの名前も知らないけれど
音楽や日射しにのって
あなたは時々僕の朝にやってくる

神様ありがとう
あなたの名前はいろいろだけれど
ひまわりやこいぬのかたちで
今日も世界を訪れている


自由詩 ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア Copyright 河野宏子 2006-04-09 07:41:06
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