午睡、散るように
霜天

光はゆっくりと、枯れたいと願う
誰かの言葉を
爪先まで飲み込んだ、午後
仰向けに動かない
私の側で

ねえ、と
呼びかける言葉の温もり
そんな響きが懐かしいと
思う私があんなにも、遠くに
花びらが空に流れていく川に
急ぎたくなる行方を
誰も知らないままで
ねえ、春が
零れ落ちていくよ
そんな時、少女なら


彼等が大人になる前に
私はコップの底を拭き取って
その日の声に備えてみせる
一日が昨日に帰っていく
すっかりと冷めたコーヒーを
窓から飛行、させてみる
ほら、大丈夫
みんな帰っていけるのだから
散らばった色と色の間で
私は誰に呼びかけるだろう


午後の眠りは、散るように
私にも、零れるものがある
寝返りのその、途中にも
ねえ
君の声が遠くなるよ
動けなくなる景色の中にも
きっと、少女なら
足音を響かせるはずなのに

今、寝息の繰り返す部屋に
光はそっと、枯れたいと願うはずで


自由詩 午睡、散るように Copyright 霜天 2006-04-09 01:55:03
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