斜線ノ空
光冨郁也

カーテンのすきまから、
むかいの住宅の屋根のうえ、
うすくもり空を見上げる。
幾本もの電線が斜めに走っている。

窓を開けると、
わずかに残されたうすい青から、
凍えた風が吹きこむ。
手をさしのばすと、
ふいに、指先が切れる。
見えない有刺鉄線が、
空と街とを区切っている。

(ソノ先ニ手ヲノバセバ、
(光ニ触レラレルダロウカ。

わたしは、さらに空に手をのばす。
透ける世界の縁をつかんだ。
(傾イテイル。
指先に力をいれると、傷口から血がにじみでる。


自由詩 斜線ノ空 Copyright 光冨郁也 2006-04-08 21:37:31
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