refrain
篠有里

あなたは掃除用具入れの夢を見ましたか
階段の下にあって
窓が無い
私は車を押して砂浜の縁を進む夢を見ました
どちらにしろ救いはありません
ドアを閉めて
速やかにここから脱出せしめましょう
誰にも知られないうちに

呪われた小学生であるところのあなたは
私がここから出ていきたいと思っている隙に
恐竜が歩く裏庭と
スポンジで出来た花壇と
鍵の壊れた理科室の
前を過ぎて
今日の終わりを告げに走ります
鐘の音とともに

石を蹴りながら
誰にも会わないように隠れて歩きなさい
車道の影
ガードレールの後ろでしゃがんでいる
あなたを見ました
私は声をかけます
見つからない事に快哉を叫んで
最後の最後でつまずくために

貌の無い生徒に強制され
無力な子供であることに飽いたその日
あなたは疲れた目で
私を見ない
暗く湿った水飲み場に行列する
濡れた冷たい手で
心を鋭くし
終わりの秒針を逃さないように

ところであなたは
今日一体何の夢を見ましたか

ところであなたは
今日一体何の夢を見ましたか

其処から此処へ
還ってきた鉄筋コンクリートの建物の中
鈍色の私はひざまずく
そう
再び祈りはじめる
内海の一番奥の
密やかな場所で
独りになれるように
そこにある
あなたと
あなたのかつての神のために


自由詩 refrain Copyright 篠有里 2006-04-07 08:55:47
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