サクラの目的
ブルース瀬戸内
サクラは様子をうかがっています。
サクラは花見客の様子をうかがっています。
すべてのサクラは本当は
稀代のソルジャー達なのです。
春、皆が浮かれている、
そのほんの一瞬を狙って
列島の爆破を試みているのです。
一年間、存分に溜めたパワーは
並大抵のものではありません。
生命力を出し尽くして
サクラは爆破を試みますが
ポン、と咲くのは淡い色の花です。
生命力を宿しすぎて
生き急いでいるからか
その花は余りにも美しくて
誰もサクラの本来の目的を知る由もありません。
サクラは申し合わせたかのように
列島を一気に駆け抜けて
その花粉に麻薬成分をまぶしたりして
私たちをかく乱しますが
今年もどこの爆破にも成功しませんでした。
ただ、その心意気は
短くしか生きれない花特有の
みなぎる生命力の象徴のようなものになっています。
散ったサクラの花びらが
風でかき集められて、渦を巻いて
ゴッホの絵のような
エナジーに溢れた空を描きます。