水平線の先の
夕凪ここあ

夏の日 帽子を残して
水平線の先が見たいと少女は

夕焼けが水面を染める
裸足で砂を踏みしめると
体温によく似ていることすら
知らないまま

空との区切りが曖昧だから
触れてはいけない 細い線に手を伸ばしてしまった少女の

名前も忘れかけた夜に
優しい潮の匂いにあの日の音がした

散らばった砂の粒のような銀色の
点と点を結んで少女の名前にしてみた
忘れてしまった一部はあの日
少女が連れてってしまった
水平線の先の 

私はもうそれきり空を見ず
あれはただの宇宙 見えない

夏の少女
水平線の先なんて知らないままでよかった
先なんて空なんて曖昧を知らないでよかった
ただ裸足になれば繋がれるのに

水平線の先が見たいと少女




自由詩 水平線の先の Copyright 夕凪ここあ 2006-04-04 00:00:52
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