創り直そうとした話
士狼(銀)

人間を創り直そうと思いまして
街中にごろごろ落っこちている部品を
拾い集めて廻ったのデス

殻は組み立て終わりましたのに
人間を模した其れは、いつまで待っても
まったく動かないのデス

(皮膚の色も鼓動も正常だというのに)
(裏町の黒猫は硝子の眼で生きるのに)

そうして明け方気が付きまして
街中にごろごろ堕っこちている感情を
拾い集めて廻ったのデス

ところが幾つ詰めてみましても
人間を模した其れは、いつまで待っても
まったく動かないのデス

ありったけ詰めました
拾った分だけ詰めました
欲望 嫉妬 罪悪感 嫌悪 好意 恋心
愛されたい心も愛したい心も
たくさんたくさん、詰めました

そうして明け方気が付きまして
誰かが落とした心を殻に詰めてみても
洞は満たされないのデス

それから其れを壊す時になって
人間の複雑さというのか、感情の多さに
少し辟易したものデシタ

(此処は僕が生きるのに、少し難しい)






自由詩 創り直そうとした話 Copyright 士狼(銀) 2006-04-03 11:53:36
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