季節
たもつ



(夏)

波音の届きそうにない
部屋でただ
いき過ぎるのを待ってる
テレビにはめ込まれた
冷たいガラスの匂いだけが
わたしに似ている



(秋)

言葉になり損ねて
落ちた木の実
そのひとつを
生えたばかりの新しい足が
踏み
つけていく
まだ生えてない
これからの新しい手が
拾い上げると
音はまだ始まったばかり



(冬)

降るものと
降らないものとが
積もったり
積もらなかったり
の野原では
むかし逝った人の口癖を真似ながら
子供たちが雪のダルマを
作っているのが見える



(季節)

自分が自分になるための入口
が季節、ね
とあの人は
出口で言った
季節、まだかしら



(春)

やわらかい、光
やわらかい、わたし
輪郭から少しはみ出して
やわらかい、土に還す
それから
春に咲かない草木にも
たくさんの水を
あげた




自由詩 季節 Copyright たもつ 2006-04-02 16:17:41
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