ウランのサイにてウワズミフカミ、へ
人間

言葉も朽ちる
地平の奥へと
ウランで造ったサイに乗れ

中は狭い
しかし未開の道よりは広い
肌に冷たい
しかし何を腐らす懸念も無い

肋骨の
はめ殺し窓はウランガラス製
焼け付く妖美な緑の裏で
黒焦げ死ぬ太陽を見届けろ

ウランで造ったサイは
どんな生き物より重い
それが奈落の愛だと知れば
何の畏れもありゃしない

鼻先の望遠鏡を覗け
虐殺の村や紛争の町はないか
決して近寄るな
尻尾の顕微鏡を覗け
足跡や糞尿に異常はないか
健康に留意せよ

背中の上には極楽鳥が
行く末を想像して鳴く
一歩
一歩
鳴き声に惑わされず
風の吹き抜ける方角へ
踏み締めて歩け

ウランで造ったサイに乗り
地平の奥へとひた進め
角を燃やして夜を裂き
雲雀が
垂直に
飛び上がるように
急降下するように
寄らず
迷わず
軽やかに
踏み締めて歩け

充血した向日葵畑に着き
ひとりゆっくり花を食め
種は出来るだけ散らかせ

向日葵と奈落の愛
その両極は
ウランで造ったサイですら
地平の線から上下に引き裂いて殺す
そうしたら
死んだ太陽の
肛門に潜り込んで
永劫の上澄みに浮かぶ
瞳孔の深みに沈んでおけば
いい
それでいい


自由詩 ウランのサイにてウワズミフカミ、へ Copyright 人間 2006-03-31 22:11:18
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