時には飾らない詩のように
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2年ほど前になるだろうか。
僕は落とし物をしてしまったのです。
それはとても大切なものだったので、ずいぶんと長い間、血眼で探しまわっていました。
でも、それは決してどこにも、その欠片さえ見つけることができませんでした。
そうして、いつしか、探すことにさえ疲れてしまって、忘れた方がいいと思うようになっていました。
でも、それは唐突に見つかったのです。
それは、思ったよりずっと近くに落ちていたのです。
それを届けてくれた人に、僕はとても深く感謝しました。
そうして思い出したのです。
それは、その人からもらったのだったということを。
僕は喜びにうちふるえました。
でも、悲しいことに、その人もまた、落とし物をしてしまっていたのです。
そのとき僕は思ったのです。
その人のために、その人の落とし物を探す手伝いをしてあげなければならない、と。
そのことに理由は必要ありませんでした。
ただ、その人が、また心から笑えるようになる日まで。
そのために、時には飾らない詩のように、想いを綴ってみたい。