時には飾らない詩のように
436

2年ほど前になるだろうか。
僕は落とし物をしてしまったのです。

それはとても大切なものだったので、ずいぶんと長い間、血眼で探しまわっていました。

でも、それは決してどこにも、その欠片さえ見つけることができませんでした。

そうして、いつしか、探すことにさえ疲れてしまって、忘れた方がいいと思うようになっていました。

でも、それは唐突に見つかったのです。

それは、思ったよりずっと近くに落ちていたのです。

それを届けてくれた人に、僕はとても深く感謝しました。

そうして思い出したのです。

それは、その人からもらったのだったということを。

僕は喜びにうちふるえました。

でも、悲しいことに、その人もまた、落とし物をしてしまっていたのです。

そのとき僕は思ったのです。

その人のために、その人の落とし物を探す手伝いをしてあげなければならない、と。

そのことに理由は必要ありませんでした。

ただ、その人が、また心から笑えるようになる日まで。

そのために、時には飾らない詩のように、想いを綴ってみたい。






自由詩 時には飾らない詩のように Copyright 436 2006-03-20 01:57:17
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