三輪バイク
よーかん

坂を目指して 
三輪バイクを引っ張っている 

青い空
雲がまばらに浮かんでる
住宅街
植木が多い

どこにいるのかわからない
坂が見つからない 
この街は
曲がりくねった短い坂だ

住宅街
ここは知らない
小さな坂
坂だらけ

あの坂は
長い
あの坂は
怖い
あの坂は
危険だ
あの坂は
すごい角度で下るんだ 

下って急に右折する 
ズルリと右折する 

アスファルトの鉄ヤスリ

右折をきりぬければ
あとはなだらか

国鉄と並走する
なだらかな坂
国鉄は分岐点
枝分かれする線路の線
電線だらけ
芝生にささる
緑のフェンス

深いドブ
フェンスの脇の
深いドブ
 
深いドブは乾いている
ドブは走れない
ドブはブレーキをうけつけない

ドブを走るには
ライセンスが必要だ

右折できれば
あとはなだらか 

線路といっしょに
ゆっくりなだらか 

この場所で
右折の練習をするんだ
スリップターンの練習を繰り返せ

自転車の少年が二人いる
こっちを見てる 
「カナディアンスタイル」 
一人がそうつぶやく
一人が微笑む

カナディアンスタイルで下れ
階段を探せ

長くて急な階段
踊り場がある階段がいい
そこで勇気を手に入れろ

図書館についた 
スタジアムの階段
カナディアンスタイルでくだれ

急な階段
赤いカーペット
滑る
降りる
滑り落ちる 

休み時間

コドモが集まる
ボクの勇姿に歓声をあげる 
オトナがボクに気づいてしまう

三輪バイクをすべらせろ

オトナはゆるさない
オトナはむやみだ
オトナはせまい
オトナはつかまえる

追われる前にだ
つかまる前にだ
のまれる前にだ
逃げてやれ
消えてやれ
オトナをゆるすな

コドモは逃げる歓声あげる

たまるか
つかまってたまるか
スピードあげろ 
オトナばかりだ 
つかまるな
つかまるなよ

あいつらは
いつも
紅茶飲んでる
会議してる
弁当たべてる
テニスしてる
電車で寝てる
しらけてる
ねむってる

コドモは階段かけあがる

先生がいる
絵本を並べる
赤い表紙に
ウサギがいる
キリンがいる
ゾウがいる

足で蹴散らせ絵本は白紙だ 

ポリスが来る 
先生がポリスに耳打ちする 
ポリスがボクを見る
包囲されてる
頭に両手を置く
逆らえば殺される
逃げ場はない 

服従のポーズ
視線をさげる

ポリスが円をつくる
終わりだ

ポリスがうなづく

帽子を脱いだ 
賛美歌を歌う
無謀な勇気を讃える賛美歌
オトコ同士の愉快な賛美歌

裏の階段に出る
三輪バイクにまたがる

滑り降りる
滑る
逃げる

いつ気が変わるかわからない

逃げろ
ポリスもオトナだ
オトコでもオトナだ

コドモは窓を必ずあける

滑る
落ちる
落ちていく

明かりがみえる 
小さいドア
雑貨屋だ

アニキが印刷してる 
離婚してコドモに会えない 
悲しくてしょうがない 
なみだが出てとまらない 
悲しみに浸かって
うな垂れている 

服を貸してもらう 
子供の写真を見て話す
なみだ拭いてる
コドモの笑顔
思い出してる

歌を教えた

昔の歌を二人で歌った
コーヒー飴を噛み砕いてる
鼻歌で踊る 

アニキがジーパン履き替えた

あの右折を曲がりにいく 
アニキにそう言った
アニキは意味を理解した

いっしょに行く
こなくていいよ
いかなくきゃいけない
きたらだめだよ
いかなきゃいけない
ここにいなよ

オレいく
だめだよ
オレいく
だめだよ

オレいくよ
ならきなよ

いっしょだな
いっしょだよ

いっしょだ
いっしょだ

いっしょ
いっしょ

うなづいた
うなづく

うなづいて
うなづいた

坂をめざして
歩きはじめる

アニキとボクが歩いてる

ジーパンまくって
半ズボンになる

晴れてる
曇り空なのに
晴れている

アニキとボクと
三輪バイク

アニキの息子が
坂でまってる


自由詩 三輪バイク Copyright よーかん 2006-03-18 21:30:40
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