歌を歌い続けた未熟者
こめ

クロスした横断歩道の

ちょうど真ん中で

僕は歌を歌い続けた

誰にも聞かれずに

無視と軽蔑を繰り返されて

僕の存在は

人間として否定され続けていた

何のために歌っているのか

なんでここにいるのか

ぼくは不安に襲われ

それを紛らわすまた歌を歌い

そのたびに僕は人間ではない

何か別の物になりつつあった

僕はいつもどおりに 

いつもの場所でうた歌っていた

もう人間の冷たい目に慣れた

また今日もいつもどおりに

無視と軽蔑を繰り返し

今日が終わり明日が来るんだなと思った

しかし今日は違った

一人の少女がこちらを優しい目で見てきた

そして手に握っていた風船を手放した

青い風船は青い空に

保護色になりながら空の

かなたに消えていった

そして少女は目からあふれんばかりの

涙を流しながらどこかへ行ってしまった

やっと僕の気持ちが伝わった

その瞬間僕は

人間の心を取り戻した



自由詩 歌を歌い続けた未熟者 Copyright こめ 2006-03-18 12:22:02
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