錆色小石
銀猫

私鉄沿線のダイヤに則り
急行列車が次々と駅を飛ばして先を急く

通路を挟んだ窓を
横に流れるフィルムに見立て
過ぎた日を思えば
思わぬ駅で乗り降りをしたわたしが映る


網棚に上着を置き忘れ
戻らなかった温もりを
反芻してみたり

ぼんやりして
傘ひとつ
見知らぬ駅まで旅をさせたり

些細な日常は
ひとり勝手なドラマ仕立てだが
わたしの歴史を辿る者は
わたししかないだろう


ここより先も風を孕んで急く
レイルの小石を跳ねてゆく

姿の無い魔物に追われながら
ささやかな宝を求めて
残る生命のうちに
叶うか叶わぬかの夢



今日は二十分の旅路で
映像を巻き戻してみた


相変わらず
空の三月に
半熟卵の月が掛かっている


自由詩 錆色小石 Copyright 銀猫 2006-03-18 12:00:22
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