空景
霜天

新しく始まるための時計の
その呼吸を練習している
一つのことが、大きすぎても
それでも朝は生まれてしまうので
一新される心音を、他人事のように聞いてしまう

どこで区切っても
省略できない空は
いつも近すぎるものが遠くて
過ぎ去れない風景ばかりが
この手には残ってしまう
いつか飛ぶ鳥の真似をしてみたけれど
未だに、声すらも辿り着けないでいる


 翌朝には
 船が出る
 そう、聞かされているけれど
 どこに信じる行方があるだろう

 単純な物事に
 値札を付けて
 そっと、押し込む
 クロールの息継ぎで
 押し寄せてくる世界へ
 翌朝にはきっと、船が出る


波間に、数多い波の一つに、切り抜ける術を聞きたくて


定まらない心音を
押さえ込む呼吸を知っている
明日には
知ることもない空の景色が
破裂する
防波堤の上
鳥になれたなら、私は─
そう言って飛び立ったあの人の行方を、どこにも
知らない

また新しく始まるための空
心音がここに、落ちてくる


自由詩 空景 Copyright 霜天 2006-03-16 01:20:10
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