達磨さんが転んだ
吉岡孝次

人が減って
電車は軽くなる
「達磨さんが転んだ」

象の鼻をのばしたような
雪原の竜巻
「達磨さんが転んだ」

西の惨事を
引用しないで済ませてごらん
「達磨さんが転んだ」

母子連れなんてどこにだっているし
どこにもいない
「達磨さんが転んだ」

十三回唱えれば
安楽死できるという伝説を今作る
「達磨さんが転んだ」

行く末にも来し方にもなじまない咳
続報を読みとばす冬
「達磨さんが転んだ」


達磨さんが転んだ
きっと遙かな史実
達磨さんが転んだ
わずかに目を瞑る遊戯


自由詩 達磨さんが転んだ Copyright 吉岡孝次 2006-03-15 21:32:24
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