たもつ



カミキリムシに噛み切られている
僕は薄い紙になっていて
手も足も出せない
手足が出たところで
噛み切られるだけだけれども

昨日までの厚みは
どこに行ってしまったのだろう
できる限りの範囲で
いろいろ包みこんでいたのに
もう産まれるんじゃない
笑いながら君が突っついた
僕の大きなお腹も既に見当たらない

それなのにまったくの平面ではなく
薄い、という厚みが
確かに僕の存在としてある
その存在をかき消すかのように
カミキリムシは僕を
噛み切り続ける

土曜日は水族館に連れて行ってね
何も知らない娘が甘える
隣では君が僕の破片を
セロテープで繋ぎ合わせている
僕の身体がふやけないように
涙をこらえているのが
今ならわかる




自由詩Copyright たもつ 2006-03-14 17:19:35
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