西日の頃には
霜天

西日の頃には
空は白く霞んでいたらしくて
滲んだ街の、ビルから生える空の景色を
ふうわりと、抜けたくて
前後左右、サングラスの目線で
せわしなく行き過ぎる人たちからは
あの強い、レモンの匂いがする

世界は高くなるたびに
白く霞んでいくものなのだ、と
どこかの国の科学者が
証明していたような気がする
それが僕らにどんな影響があるのかについては
沈黙したまま、だけど


西日の頃には
空は白く霞んでいく
それを見られるのなら
それで、いいのかもしれない
今日も、ビルから生える空の景色を
眺めた後で
似顔絵を書き続ける少年の
隣に戻る
何十人と書き続けても
まだ誰にも辿り着けない、らしい
振り向いた人たちのサングラスの奥で
視線が左右に揺れた
気がした



きっと、遠回りがしたくて
連続していくものの隣で
重ね合わせる金属の音
響いていくものが欲しかった
西日の街で
空は広げた、手のひらから生えていて
白く霞んでいたのは
続いていかない僕らの方だったのかも
しれない


自由詩 西日の頃には Copyright 霜天 2006-03-09 00:53:24
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