【やまだくんへ〜今もまだ笑っているのかい〜】
仲本いすら

君を書き終えて、結構な時間が経った。
君は今も、元気に笑っているだろうか?
それとも「なんでこんなにはやく終わらせたんだ」と、怒っているだろうか?

複数の方に言われた「短すぎる」の一言。
たしかに、君を表現していく上であの作品数は短すぎたのかもしれない。
もっともっと、君の事に関して書いていくネタはたくさんあった。
頭に巣食う君を、表現する機会はたくさんあった。
しかし、僕はそれをあえてしなかった。したくなかった。

なぜだかわかるかい、ねえ、君。

君の事を多く語ることによって、君の表情や君の仕草
君の考え、君の思い。
それらを、僕が勝手に「はっきりと」線を濃くしていって
「これが、やまだくんだ」と決め付けたくなかったんだ。
君、「やまだくん」はもちろん実在はしない。
しかし、君の名前に「やまだ」をつけたのは、もっともポピュラーな慣れ親しんでいる
苗字で、みんなの心の中にスっと入っていってほしかったから。
みんなの頭にあるイメージの「山田」。
それらと、僕が書く君「やまだくん」がうまくミックスされることによって
本当のやまだくんってのは、できあがる。いや、そうであってほしいと
願ってたんだ。

二通りのEND。
ある意味、小説や小話としては最悪な行為なのではないか、と自問する。
しかし、この「やまだくん」シリーズの中で君は二つの運命を背負っていたんだと
僕は断言する。
君は「転校」したのか。それとも「死亡」したのか。
その二つに意見がわかれるように仕向けたのは、僕だ。
正直、君の運命をもてあそんでしまったことをすまなく思っている。

しかし、仕方が無かった。

二つの運命。
そして二つの終り。
どのベクトルがどの答えに繋がるかは、読み手次第。
そういうからくりを入れることによって、君はもっと心に巣食ってくれるんじゃないかって
そう、イジワルだったのかもしれないね。

でも、なんというのかな。
自分としての本当の終りとしては君は死んでいるんだ。

君の死、そして「主人公」の心の葛藤。
それが、この詩のテーマだったんだ。君。

でも、それじゃ救われない。救われなさ過ぎる。
だからこそ、二通りのエンドにした。君が笑顔でいられるように。

でも、今ではこうも思うんだ。
そんなことしなくても、君は皆の心の中でずっと笑顔だったんじゃないのか、って。

お弁当から、最後の最後までずっとずっと。


とにかく、君には謝りたい。

そして、ありがとう、と言いたい。

またいつか、君を書くときがきたのなら
その時は、またよろしく頼むよ。






Thank you Yamada.




散文(批評随筆小説等) 【やまだくんへ〜今もまだ笑っているのかい〜】 Copyright 仲本いすら 2006-03-05 20:16:51
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
【やまだくん】