千代紙
A道化



そのとき私は
この上なく上手に手を引かれ
視界は薄紅と肌
幾度瞬いても
ある薄紅、と、ある肌の


指の届く範囲に全ての指が在り
与えられた視界に全てが揃い
あの薄紅、あの肌ゆえの悦び
花を極める千代紙のようだった
その完璧な図案


私は
少女的な無邪気さで狭めた目蓋の陰から視界を覗き見ては
薄紅と肌をぎりぎりまで危うく縮めその完璧な図案の細部を悦び


そのようにして、幾度か春でした
滅びるなどとは思えなかった薄紅と肌
幾度瞬いても滅びるなどとは思えなかった
あの薄紅、と、あの肌の
ああ、あの完璧な図案



2003.3.4.


自由詩 千代紙 Copyright A道化 2006-03-04 15:08:23
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