春はあけぼの
落合朱美


息を 
わたしたちは潜めて 
東の空の彼方から 
春がやって来るのを 
待ち侘びていた 

夜明けに 
うすい紫の風が
わたしたちの 
頭の上を撫でながら 
通り抜けてゆくとき 
あなたの息遣いを 
耳もと近くに感じて 
頬が熱くなった

もうすぐ 
辛夷のつぼみが綻ぶよ 
椋鳥がそう告げて 
ほの紅い空に飛び立ち
わたしはまだ冷たい指先を 
あなたに預けた 

今日からの季節を
春と呼ぶことにしましょう
そうしてお昼には
わたしたちは陽溜りに
会いに行きましょう

頬を寄せて囁いたら
あなたの指先に力がこもり
わたしはほっと安堵して 
もうすこしだけ 
淡い微睡みに落ちてゆく 





自由詩 春はあけぼの Copyright 落合朱美 2006-03-03 23:46:37縦
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