あの日
かがり

大地が揺れた あの日
父は安物のタンスの下敷きになった

私は朝7時 いつものように
テレビをつけた
育った街が燃えているのを見た

それから
つながらない電話を
ふるえる手でやっともどし

乗り継いで 乗り継いで
歩いて 歩いて
歩いて 歩いた 夜

電気も水もガスも
ぬくもりも音もない部屋
あなたは座っていた
タンスできれて血のにじむ頭に
はちまきのようにタオルを巻いて
酒を のんでいた

ただ 立ちすくんで
子供のときのように
大声で泣きだしてしまいそうな私の顔を見て
あなたは 言った

「大丈夫や、心配すんな なんとかなるわ」

それから黙りとおして
あなたは 今も がんばっている


自由詩 あの日 Copyright かがり 2006-03-01 14:48:37
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