あの日
かがり
大地が揺れた あの日
父は安物のタンスの下敷きになった
私は朝7時 いつものように
テレビをつけた
育った街が燃えているのを見た
それから
つながらない電話を
ふるえる手でやっともどし
乗り継いで 乗り継いで
歩いて 歩いて
歩いて 歩いた 夜
電気も水もガスも
ぬくもりも音もない部屋
あなたは座っていた
タンスできれて血のにじむ頭に
はちまきのようにタオルを巻いて
酒を のんでいた
ただ 立ちすくんで
子供のときのように
大声で泣きだしてしまいそうな私の顔を見て
あなたは 言った
「大丈夫や、心配すんな なんとかなるわ」
それから黙りとおして
あなたは 今も がんばっている