回転
あおば


生意気で大柄で強欲な
回転する物体を
思いきり斧で叩いたが
弾き飛ばされ壁に刺さったまま
落ちて来ない
回転はすぐに元に戻って知らぬ顔
電気仕掛けで回っているのか
ただ、大きく重く、勢いが良いだけなのか
理由は解らないが
とにかく、斧では敵わない

大きなまさかり借りてきて
思いきり打ち下ろす
見当狂って芯に当たらず
回転の息を荒くしただけだ
まさかりの刃が欠けたので
言い訳の砥石も借りてきた
天然石に電着ダイヤの高級品
ゴリゴリ擦って形を整え
天然石で仕上げする
ゴシゴシ、しゅるしゅる日が暮れた
回転は勢い強め家を出ていった
しゅるしゅる音の後を追い
研ぎたてのまさかりかついで
都市へ行く

あんまり車が多いので
とうとう回転を見失い
貸しマンションの一室に
まさかり置いて一休み
隣りの人は何様か
てんでに気配が致しません
いつまで経っても音が無い
我慢に我慢の丑三つ時に
開かぬドアーに怒り爆発
思い切りまさかり打ち下ろす
思いのほかにあっさりと
ドアは壊れてなだれ込む
部屋の中は赤々として
驚くまいか
中では回転が、微動もせずに
大威張り、部屋を占拠して
元の家族を奴隷にし
大飯を食らっておりました
女奴隷にされたまま
ひたすら畏まる奥方を
助け出すのはこの時と
手にするまさかり投げ付けた
思いのほかに回転は素早くて
体を入れ替え
奥方を盾にしてしまう
奥方の胸元にまさかり命中
朱に染まって絶命す
この恨みどうしてくれよう
阿鼻狂乱の騒ぎをよそに
回転は姿を隠し
まさかりの運も消滅す
警官の来ない前に
まさかり残して逃げ出した

群集の中を潜り抜けて
スマートになった回転は
新町99丁目の回転厨司に奉公し
いつのまにやら店主顔
これでは見つからない道理です
この町の
難しい顔をした堅気にも
回転の
息の掛かった連中が
今では大勢居りまして
私にはどうしても
退治できないのでございます



作2000/04/05




自由詩 回転 Copyright あおば 2006-03-01 00:00:32
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