眼差し
たもつ



男は静かな眼差しだった
椅子に腰掛けていた
眼鏡の中を覗き込むと
男には目が無かった
代わりに水槽があった
水面は微かに波打っていた
魚が数匹泳いでいた
楽しそうではなかった
知る必要の無い日常だった
男は両手を広げ
小さな咆哮とともに
水槽に飛び込んだ
飛沫、そして
水の弾ける音
私は見届けたのだ
後に残された眼鏡をかけて
鏡の前に立ってみる
先程の男がいた
ずぶ濡れていた



自由詩 眼差し Copyright たもつ 2006-02-25 06:27:52
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