鏡の世界
炭本 樹宏


 鏡でできた世界から招待状がきた
 どんな世界?

 そこは全てが自分で埋まっていた
 すきまなく

 右手を動かせば全ての自分は左手を動かし
 にこりとほほえめば
 ぶすっとおこった顔だらけになる

 寝ると起きて
 起きると寝て

 しばらく鏡の世界にいるうちに
 僕は精神薬なしではいられなくなり
 日増しに気が狂っていった

 意識が朦朧とするなか
 もう この世界では生きていけないと悟った

 そして
 心の奥の奥まで見せられたとき
 ついに生きることができなくなった

 深い眠りのなか
 本当に恐ろしいのは自分だったんだと
 気付いているのだった




自由詩 鏡の世界 Copyright 炭本 樹宏 2006-02-23 23:05:04
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