ノート(まぶしい日 Ⅱ)
木立 悟


窓のそばでかさをひらくと
ともだちの声が聞こえないので
仕方なくかさを持ったまま
くちびるの動きを見つめている
青かったかさ
今はむらさき



何かがすさすさ動いている
どこか見えないものの影が
いくつも窓を通りすぎる
光と音のはざまの遠さに
まだらな午後のはばたきがある



外の光を脱いでは履いて 
履いては脱いで 履いては脱いで 
ひらいたままのかさの下
ふいに鳴いた姫鏡台を
猫のように抱きしめて
むらさきの声を反芻する
くちびるの光を反芻する



雲の下の風を飛び
雲の上の陽に染まる
まだらな午後の翼の子
新しい海と新しい空のはざまに
静かに影を撒いてゆく
小さな影を撒いてゆく





自由詩 ノート(まぶしい日 Ⅱ) Copyright 木立 悟 2004-02-02 09:47:25
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