空になりたい
夕凪ここあ

私はその日かごの中にいました
かごの中には私だけしか
ありませんでした

次の日も
私はかごの中にいました
次の日も、その次も
あまりにも
そのようなことが続くので
私は悲しくなりました

残酷なことに
目の前には空が広がっていました
幾ら手を伸ばしたところで
空しく空気を切るばかりです

私は
それでも夕焼けの時間が
一番好きでした
優しいあたたかさが体を包んで
安心できるのです
(かごの中はそれはそれは寒い場所でしたから)


どのくらいの日々が過ぎたのでしょうか
最近の私は
眠っている時間が多くなりました
空を眺めることも
少なくなってきました
終わりが近づいてくるのが
自分でもわかります
それでも夕焼けだけはしっかりと
この目に焼き付けました

かごの中に
私の小さな欠片にも似たものが
はらり、はらり
と落ちていきます

あの日
空に手を伸ばしたことを思い出し
小さな声で泣きました

私はついに
空に触れることなく
欠片の中で
長い長い眠りにつきました

(私の泣いた声は
誰にも鳴き声にしか聞こえなかったといいます)



あぁ、
もしこの次目覚めることがあったなら
私は空になりたい


自由詩 空になりたい Copyright 夕凪ここあ 2006-02-22 02:10:03
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