愛 衒学五重奏
クリ

 ●物理学者との愛

彼女の名前は量子
二人の愛を確かめようとすると
何かが定められなくなる
それでも熱く統合しようとする彼女
「髪を噛んで…」
ああ 量子
僕は無我夢中で繰り込んでいく

彼女の肢体を貫くものには
かすかな重さがあった


 ●老練(つ)な愛

生まれたままの姿の彼女に
すり込む すり込む
彼女は僕に 指環をはめる
別の角度から眺めてみると
彼女は縮こまり 時はたゆとう
すると左胸から蝶がひらり
右胸に 嵐が起こった


 ●PHPな愛

昨日の女から今日の女へ
刹那の言葉のセッション
手練手管を含め(includeす)る
愛していると 最初に言わないで
ただ愛してくれれば それでいい
あらゆる僕たちの仕草が
いつも関わるだけの数となる
木霊になって返ってくるよ


 ●古生物学者との愛

灯を消した街の底では
彼女の肌の色は分からない
でも彼女が明日 消えることは分かる
四つん這いになってごらん
そして重く 何かがのしかかる
ああ どうして潰れずにいられよう??

大きく輝く流れ星を見ながら
僕らは淘汰されはしなかったのだ


 ●数学者との愛
   e^iπ+1=0
ああ こんなにいっぱい…
ネピアを僕がおっぱいに乗せ…
もいちど くわえてみる
何も残らない

成り立たない3人の言い分
余白に書き切れない言い訳
忍び寄るフェルマータ
粗雑な策略を巡らしては
僕は350年をいっきに跳んだ


                 Kuri, Kipple : 2004.02.02



未詩・独白 愛 衒学五重奏 Copyright クリ 2004-02-02 02:01:42
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