隙間
a.u.i.

この街にも星はあった
どこか
小さな頃の痛みにもそれは似ていて
それでいて
世界中の貧困と苦悩と悲しみがどっと流れ込む隙間はなかった
-b±√b2-4ac
a=――――――
2a
たくさんの数式が頭を過ぎったけれど
その言葉は音になる方法を知らず
私の中でいつか死んでしまえ



握る手は、
あたたかかった




マニキュア瓶が倒れて
夜の空はきらきらのシンナー漬けになって
もう鳥は空を飛べないね、と私が言うと
それを美しいと言うきみをかわいそうだなんて思わないよ、


みな



どうかしてる



母が一部を裂いてくれた私の体は
消えようと思えば遮断機のすれ違う真っ赤な音の隙間に消えることもできた
私は近視だ
こんな二枚の手で紡ぎ出した言の葉は
いつかは枯れて
土を耕せ



いのちは幸福になるためにあるから
覚醒にほだされた夜明け烏は朝の空を赤らめて



私にしかできないなにかと






私にしかできないなにかを



夕刻が私を張り付けていた
帰り道に呟いた
強くなりたい、


自由詩 隙間 Copyright a.u.i. 2006-02-21 01:33:13
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