花を植えたい
霜天

夜明け前に呼吸が足りなくなって
遠い地名を呼びながら目が覚める
ほんの、少し前まで
そこにあったはずの夢に
花を、植えたい
声の鳴る丘、霧降る峠、新しい駅の三番線
いつか出会ったような
いつか出会うような
遠い地名に
揺れる花を見たい


白い花がいい
黄色がほんの少し、混ざるような
黄昏て、想うように
次の呼吸を思い出して
リズムを戻す

いつも
簡単にいかない私は
傘を折りたたむその先で
次の雨を気にしている
鞄の底に溜まっていくように

そしていつもの仕草を忘れる
雨の白い通りに花が、欲しい




海に
花を植えたい
動けないほどに滑らかな凪に
私の映る波間に

きっとそこでも、私が足りない
夜になれば遠くから返されてくる
今日を重ねて、区切るために
遠い誰かに、花を植えたい
名前がいつか繋がるために
白い、花がいい


いつも、ひとつの日
同じように雨がその日も、やさしい


自由詩 花を植えたい Copyright 霜天 2006-02-21 01:27:46
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