独 Ⅲ
木立 悟





夜の空の
黒い花が飛び去る
遠くと近くの二つの雨から
異なる水のにおいが吹いてくる
道から道へ 連なる星へ
祭の砂はふりかかる
立ちつくす者の目に痛い光が
ひとつの星の履歴を追いかける


枯れ枝の塔が空へ向かい
幾重にも雨をとり囲む
ゆるやかにしなり
夜を金に染めながら
地から飛び立つ火を導いている


雨と風に目覚めたばかりの
朝の町の灰色に
氷山の庭が降りてくる
空のものではない蒼さが
はじまりの光が
降りてくる


たくさんの声のうねりがうねりのままに
冷たくひろくふりそそぐ
ひとり北へと向かうものに
いましめのようにすがりつく
現われては去る
ひとつの雷
ひとつの影
季節のまわりを巡り
水晶の語らいとなり
光の立体のなかの
ひとつの微笑みになってゆく











自由詩 独 Ⅲ Copyright 木立 悟 2006-02-20 23:28:09
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